歯の再生医療

以前から歯の再生医療に関する発表はありましたが、今年の3月にビーグル犬の幹細胞から作った歯のもとである「歯胚(しはい)」を使って構造・機能的に完全な歯を再生させることに成功したと、岡山大学と理化学研究所の研究グループが発表しました。
これまでは歯の喪失に対し、入れ歯やブリッジ、人工歯根を用いて機能を代替してきました。しかし咀嚼や嚥下の根本的な機能回復の必要性から生物学的な歯の再生への期待を背景にして、研究が進められてきたそうです。

同様の研究はマウスでの成功例が発表されていましたが、大型動物の成果は初めてとのことです。これによって研究はさらに進展していくと言われているそうですが、実際には若齢期の歯胚細胞を利用した研究であって歯を失った成人・高齢者へ適応される技術となるまでには越えなければいけない課題は多いようです。効果的な治療法として早期に確立して欲しいと思いますが、人体での実用化はまだまだ先の話です。

全身疾患に影響を与える口腔疾患

今までも何度か取り上げてきた全身疾患との関係性をまとめてみました。口腔疾患そのものが全身へ悪影響を及ぼす以外に、口腔内の状態、日々の清掃状態など普段の生活が影響することもあります。

認知症
歯がなく、入れ歯も使用していない人は、20本以上歯がある人に比べ認知症発症リスクが約1.9倍となる

肺炎
専門的口腔ケアを行っていない人は、実施者と比べ肺炎発症リスクが約1.6倍となる。

脳梗塞
歯周病にかかっている人は、かかっていない人に比べ脳梗塞発症リスクが約2.8倍となる。

糖尿病
歯周病にかかっている人は、かかっていない人に比べ糖尿病発症リスクが約2倍となる。

心血管疾患
歯周病にかかっている人は、かかっていない人に比べ心血管疾患発症リスクが1.15〜1.24倍となる。

低体重児出産
歯周病にかかっている妊婦は、かかっていない人に比べ低体重児出産リスクが約4.3倍となる

上記からもわかるように、歯周病が多くの全身疾患発症リスクを高めます。

厚生労働省が行なった調査では、成人(30〜64歳)の約8割が歯周病に罹っているという結果が報告されており、国民病とも言われています。これは日本に限ったことではなく、世界的にみても罹患者は多く、最も感染者が多い病気としてギネスⓇ登録されているほどです。

 

健康な歯茎は淡い桃色で引きしまっていますが、ブラッシングが正しく出来ていないと、歯肉に炎症が起こったり、赤く腫れたり、歯肉から出血します。これが歯肉炎の症状です。
さらに歯肉炎が改善されないまま歯周組織にまで炎症が進むと、歯と歯肉の境目の溝が深くなって歯周ポケットが形成されます。ポケットが深くなると歯槽骨までもが吸収され、歯周組織が破壊される状態を歯周炎と言います。
歯周病は厄介なお口の病気であり、初期段階では自覚症状がほとんどありません。重症化して歯が動揺するようになって初めて気づくことも多く、歯を失ってしまう最大の原因でもあります。

歯周病の予防には毎日のブラッシングがとても重要です。但し、正しく磨けているかどうかが重要であり、単に歯ブラシをしたからと言って歯周病予防につながっているとは限りません。日々のブラッシングを正しく、そして効果的に行う為にはプロの介入が不可欠です。
一般的に歯がある方は歯や歯根の表面からプラーク(歯垢)と歯石を除去する為に、音波などの振動を利用した機械で清掃します。機械清掃時には水流が出るので水分制限されている方や飲み込み機能の低下が見られる方には誤嚥しないように手持ちの器具を使って除去を行う場合もあります。

 

[Q&A]使用休止中の入れ歯の保管方法は?

高齢になると様々な病気に罹ってしまうことがあり、療養中には入れ歯を使用を休止することがあります。風邪やインフルエンザの場合は1週間程度、点滴など経口摂取出来ない状態が続く場合はさらに長くなります。長い期間入れ歯の使用を休止する場合、どのように保管するのが良いのでしょうか?

1,2週間程度であれば保管ケースに水を張り、1日置きに水を交換しましょう。水は頻繁に交換して下さい。しかし長期間となると水の交換作業が負担となったり、忘れてしまうこともあります。季節によっては綺麗な水を張っていても直ぐに細菌やカビが繁殖してしまいます。カビが生えてしまうと入れ歯の細かい溝にまで根を張ってしまい、洗浄しても落ちません。長期間となる場合は十分に入れ歯を乾燥させて、外気に触れないよう密封パックなどに入れて保管して下さい。

体調が回復しても生体の変化、あるいは入れ歯の変形によって適合しない場合があります。入れ歯の使用を再開する前には、必ず歯科医師による状態の確認や調整を行った上で使用するようにしましょう。