[Q&A]舌(べろ)を掃除する頻度は?

唾液分泌量が減ると舌上に汚れが溜まりやすくなります。白色や茶褐色のコケ状の汚れは舌苔(ぜったい)と呼ばれ、口臭の原因だけでなく、それらの中で細菌やウイルスが増殖すると全身に悪影響を与えます。そのために常日頃から舌も綺麗にしておく必要があるのです。ご自身で舌の掃除が出来る場合は、就寝前の歯ブラシの時に鏡を見ながら舌専用のブラシ、または歯ブラシで味蕾と呼ばれる味を感じるセンサーを傷つけないようにかき出すように掃除します。口腔清掃の介助が必要な方に対しては、週1回程度を目安とし以下の点に気を付けながら清掃を行います。
・力を入れず、奥から手前にかき出すようにブラシを動かす。
・舌の奥は嘔吐反射が出やすいので、舌の中ほどより奥には入れない。
・指示が入らない、拒絶、防御反射があれば中止する。

口腔清掃は継続して行う必要があります。その後の拒絶にもつながってしまうため、決して無理に行わないでください。また出来れば歯ブラシを代用せず、短時間で効率的に実施出来る舌専用ブラシを使いましょう。

[Q&A]新しい入れ歯を無くしてしまったら

介護施設のスタッフから「新しく作った入れ歯を無くしてしまったようで、もう一度作り直せますか?」と聞かれることがあります。認知症が進むと入れ歯を口の中の異物として認識するためか、外して洋服の中に隠したり、更にはゴミ箱に捨てたという話も聞きます。たまたま誰も気付かずに廃棄してしまうと、新しく作り直すしかありません。

ご家族も同意の上で歯医者に作り直しを依頼しても、実際には保険が適用出来ないケースが存在します。それは前回の入れ歯の製作開始時の歯型取りの日から6ヶ月以内の製作については保険診療が適用出来ないという保険制度上のルールがあるからです。なお、違う部位であれば製作は可能です。

特に自己管理が難しい方については、新しい入れ歯を使い始めてから慣れるまでの間、保管場所や着脱のタイミングを本人に代わって管理する方が必要です。

[Q&A]使用休止中の入れ歯の保管方法は?

高齢になると様々な病気に罹ってしまうことがあり、療養中には入れ歯を使用を休止することがあります。風邪やインフルエンザの場合は1週間程度、点滴など経口摂取出来ない状態が続く場合はさらに長くなります。長い期間入れ歯の使用を休止する場合、どのように保管するのが良いのでしょうか?

1,2週間程度であれば保管ケースに水を張り、1日置きに水を交換しましょう。水は頻繁に交換して下さい。しかし長期間となると水の交換作業が負担となったり、忘れてしまうこともあります。季節によっては綺麗な水を張っていても直ぐに細菌やカビが繁殖してしまいます。カビが生えてしまうと入れ歯の細かい溝にまで根を張ってしまい、洗浄しても落ちません。長期間となる場合は十分に入れ歯を乾燥させて、外気に触れないよう密封パックなどに入れて保管して下さい。

体調が回復しても生体の変化、あるいは入れ歯の変形によって適合しない場合があります。入れ歯の使用を再開する前には、必ず歯科医師による状態の確認や調整を行った上で使用するようにしましょう。

[Q&A]嘔吐した入れ歯の洗浄方法は?

ノロウイルスの感染によって嘔吐した際、吐しゃ物の中に入れ歯があったという話を聞きます。口を大きく開けた状態のところに胃の内容物が逆流してくる為、入れ歯を外へ押し出してしまうからです。吐き出された入れ歯にはウイルスが付着しているので、洗浄が終わるまでは使用を控えます。

厚生労働省によると消毒方法として以下の2つが挙げられています。
・85℃・1分間以上の熱を加える
・次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm)

但し、入れ歯はプラスチックで出来ているため熱を加えると変形します。せっかく体調が回復しても入れ歯が変形したことで食べられなくなっては元も子もありませんので、液体での消毒を行いましょう。ノロウイルス用の消毒液も市販されていますが、家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用出来ます。プラスチック製品の除菌であれば30秒~1分程度の浸け置きで良いとされています。長時間浸け置きすると漂白による変色の可能性もあります。消毒を行う前には、「使用上の注意」を必ず確認して下さい。

[Q&A]胃ろうに口腔ケアは不要ですか?

何らかの原因によってお口から物を食べれない場合に、チューブを通して体内に直接栄養を送る方法として胃ろうの他にも、経鼻、経腸などがあります。チューブによって栄養摂取するため、お口を使って食事することがなくなります。そこで口腔ケアの必要がないと思われているのかもしれません。

口腔内には健常者であっても常に細菌やカビ、ウイルス、原虫がいます。その細菌等には自分の身体を守ってくれる者もいますが、悪影響を与える者もいます。特に細菌やウイルスは暖かく湿った場所で増殖します。

経口摂取していない場合でも唾液や痰は出ますし、ごく稀に栄養剤や胃液、胃の内容物が逆流して口腔内に溜まることがあります。不衛生で湿ったお口は細菌等を増殖させ、歯肉炎や歯周病、むし歯などの歯科疾患を引き起こし、更には肺炎や動脈硬化など全身疾患を引き起こす原因にもつながります。
つまり非経口摂取の状態であっても、常にお口を衛生的に保つようケアをしなければなりません。またもし入れ歯をお持ちであれば、適合状態の維持と共に嚥下・咀嚼機能改善にも効果が期待出来るため装着を続けましょう。

[Q&A]入れ歯に寿命はありますか?

入れ歯は使用する人のお口の形状や残った歯の数に違いがある為一人ひとりオーダーメイドで製作されます。その為使用する人のお口の状態が変われば当然入れ歯も合わなくなります。

これを歯科では義歯の不適合状態と言います。ただ不適合になったとしても粘膜面の調整や増歯等の修理、割れてしまったとしても破損状態によっては金属等の補強線を付け加えて対処出来る場合もあります。修理が出来るかどうかは入れ歯とお口の状態にもよるので、必ずかかりつけの歯科医に相談しましょう。

長年同じ入れ歯を使用していると入れ歯を支えるご自身の歯や歯茎の土手の高さや幅が変わったり、また咬む面が擦り減って平らになります。こうなると新しく作り直す他ありません。入れ歯の寿命は使用状況や口内変化の状況によっても異なりますが、10年も持てば長い方と言われています。

咬む面が平らになってしまうと、当然ですが食べ物を噛み砕く能力は低下します。日頃から定期的なメインテナンスを行っておくと共に、咬む面が擦り減って平らになっていないかを観察しておきましょう。

[Q&A]舌につく白い汚れは何ですか?

舌表面に付着している白色または茶褐色の汚れは舌苔(ぜったい)と呼ばれる苔状の汚れです。舌苔の付着原因は、その方の全身状態や服薬、口腔内の状態(唾液量や乾燥の度合い)など様々です。
普段使っている歯ブラシで除去清掃すると嘔吐反射が起こったり、また除去する程度についても判断がつきにくい為に、専門職種ではない介護現場の職員にとって舌のケアは難敵です。更に開口量が小さい、開口保持が難しい場合には汚れの程度や範囲すら判断出来ません。

では自然に減少するのを待てばいいのでしょうか?

2015年に「舌苔の付着面積が大きい人は、呼気中のアセトアルデヒド濃度が高い」ことを岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の研究グループが突き止めました。口の中のアセトアルデヒドは、口や喉の癌の原因となることが指摘されており、舌を清掃することは非常に重要なことです。

日常的な口腔ケアでは難しい専門性を伴うケアには、専門職種である歯科医師、歯科衛生士との連携の下で進めていきましょう。

[Q&A]食後すぐの歯磨きは良いの?悪いの?

数年前からテレビ番組やインターネット上では~食後すぐの歯ブラシは歯を削ってしまうので良くない~という報道や、記事が増えています。詳しく調べてみると、アメリカの歯科医師が食事中に炭酸や酸性ソフトドリンクを飲んで食後20分以内に歯ブラシするとエナメル質や象牙質に酸が届き易く、飲まない時に比べて歯を早く溶かしてしまうというインタビュー記事がきっかけとなっているようです。

しかし日本において、また特に高齢者がご自身で作る食事や介護施設で提供される食事で、こうした炭酸や酸性ソフトドリンクを飲みながら食事するという習慣はあまりないように思います。

そもそもお口の中は食後すぐに酸性となります。その後は唾液の緩衝作用により1時間程かけて徐々に中和され、カルシウム等が供給されることで再石灰化が行われます。一方で食事によって栄養素が取り込まれた温かく湿ったお口の中は、ウイルスや細菌の増殖に最適な環境です。

歯の摩耗を心配するよりも抵抗力や唾液分泌量が低下しやすい高齢者にとっては、出来るだけ早く口内清掃を行ってもらうことの方が大事です。

[Q&A]入れ歯は寝る時に外す?つけたまま?

入れ歯を寝るときにつけていないと不安という方が居れば、違和感を感じるので外して寝たいという方もいます。歯科医師が普段と逆の指導をしたとしても、長年の生活習慣はそう簡単には変えられないものです。

では就寝時の義歯装着は、付ける、付けない、どちらが正しいのでしょうか?

歯茎や粘膜を休ませるためや、小さな部分入れ歯や、適合せずに外れやすい入れ歯など、その時の状態や形状によっては誤飲する可能性があるために外しておく等、装着しないことを勧める場合があります。逆に、噛み合わせに不具合が生じるから出来るだけ装着しておく場合や、顔の形が変化する、夜間の緊急時に持ち出し忘れがない、紛失しない為という理由から装着を勧める場合もあります。

最近では嚥下機能の観点から「噛み合わせがあると飲み込みが良くなる」ことから、常時装着を勧める場合が増えてきています。

結論としては、入れ歯の形状や、ご自身での管理能力の可否、体の状態(飲み込みや、噛み合わせの状態など)を考慮しながら、当然ご本人の使用感に対するこだわりや、夜間装着感の感触なども含めて総合的に判断した結果が、その方に最も適した装着方法となります。