歯の平均寿命も過去最高

平均寿命が年々上昇していますが、残っている歯の割合も増え続けています。平成29年6月に厚生労働省が発表した歯科疾患実態調査結果の概要によると、80歳になっても自分の歯が20本以上ある人の割合が、前回調査の40.2%から51.2%に増加して調査毎に過去の数値を更新し続けているとのことです。

20本以上の歯を有する者の割合の年次推移
20本以上の歯を有する者の割合の年次推移

 

年齢層別グラフの中で80~84歳を見ても平成5年の11.7%から平成28年には44.2%へと23年間で約4倍、85歳以上では9倍以上も上昇しています。
複合的な要素があると思いますが、この間歯科医院の数が劇的に増えたこともなく、また日本における成人歯科健診の実施率および受診率が低い事を考えると、一人一人の予防意識の高まりや歯科治療技術の進歩によって、歯の寿命も延びていると考えられます。

 

歯の寿命が延びることで一番その価値を感じられるのが、

美味しく食べられる。

ことです。経験者である高齢者に聞くと、歯があるうちは美味しく食べられて当然と思っているのでなかなか気付かないが、失ってみると歯のある有難さに気付くのだそうです。また何度か触れてきた話題ではありますが、歯があると発声がしやすい、窒息リスクを減らせる、奥歯があると転倒しにくくなったり全身疾患に罹りにくいなど、生活上でさまざまな恩恵を受けているのです。
下の表は、故・加藤順吉郎医師が平成7年に愛知県内の施設で実施したアンケートを集計したものです。

要介護高齢者の日常生活における関心事(施設でたのしいこと)
要介護高齢者の日常生活における関心事(施設でたのしいこと)

 

施設等で介護を受ける高齢者にとって一番楽しいことは「食事」です。しかし楽しく食事をとり続けるためには、口腔内を衛生的に保っておかなければ美味しさを感じられません。美味しさを感じられないということは、一番の楽しみを奪うことになります。だからこそ、日々の清掃活動というのは非常に大きな意味を持つのです。
一度失った歯は戻ってきません。その時になってはじめて事の重大さに気がつくのでは遅いのです。歯科疾患の早期発見の為にも、かかりつけの歯科医院を持って、定期的に検診やクリーニング、メインテナンスを受けましょう。

[Q&A]新しい入れ歯を無くしてしまったら

介護施設のスタッフから「新しく作った入れ歯を無くしてしまったようで、もう一度作り直せますか?」と聞かれることがあります。認知症が進むと入れ歯を口の中の異物として認識するためか、外して洋服の中に隠したり、更にはゴミ箱に捨てたという話も聞きます。たまたま誰も気付かずに廃棄してしまうと、新しく作り直すしかありません。

ご家族も同意の上で歯医者に作り直しを依頼しても、実際には保険が適用出来ないケースが存在します。それは前回の入れ歯の製作開始時の歯型取りの日から6ヶ月以内の製作については保険診療が適用出来ないという保険制度上のルールがあるからです。なお、違う部位であれば製作は可能です。

特に自己管理が難しい方については、新しい入れ歯を使い始めてから慣れるまでの間、保管場所や着脱のタイミングを本人に代わって管理する方が必要です。

脳卒中や認知症リスク3倍のドリンク!?

今年4月に米国医学誌で公開された論文で、人工甘味料を含んだ飲料水を多く飲むと、飲まない人に比べて脳卒中や認知症のリスクが約3倍に高まったという研究結果が報告されました。

ボストン大学神経科のMatthew P. Pase氏らが行った延べ4372名の追跡調査によるもので、人工甘味料を含んだソフトドリンクの累積摂取量が高いほど虚血性脳卒中で2.96倍、アルツハイマー型認知症で2.89倍と高まることが明らかになりました。なお、砂糖を含むソフトドリンクの場合においては、脳卒中または認知症リスクとの関連性が無いことも報告されています。

昨今のダイエットブームや健康志向を背景として低カロリーが売りの飲料水が多く売られ、夏の時期には1日の水分摂取量も増えるため、人工甘味料入りドリンクをより多く摂取しがちです。

ノンシュガー、シュガーフリー、カロリーオフ、カロリーゼロ、ライトという表記があると大抵の場合人工甘味料が使われています。こまめな水分補給は必要ですが、人工甘味料入りドリンクよりも、ミネラルを含んだ麦茶などの自然素材の飲み物に変えてみてはいかがでしょうか。