認知症・転倒リスクと口の働き

「よく噛むことが脳を活性化させる」と言われるように、口腔機能は脳に対して大きな刺激を与えています。下の図はペンフィールドの地図と言い、大脳皮質の各部位が身体のどの器官に直結しているかを表すもので、大脳の体性感覚野と運動野において口腔領域に関与する部分は全体の約4割を占めています。

人間の大脳皮質(ペンフィールドの地図)

脳の神経伝達物質「アセチルコリン」の量は噛むことで増加します。歯がない人で入れ歯も使っていないと、歯が20本以上ある人に比べて認知症発症リスクが約1.9倍に高まったという報告があります。しかし歯がなくても入れ歯を使うことで、その認知症発症リスクを約半分に抑えることが出来るという結果も報告されています。お口の働きと脳には密接な関係があり、会話したり、食べる事で活性化されますが、咀嚼能力が低下すると脳への血流も低下します。噛める状態を維持していくことも、認知症予防の為に大切なことなのです。

自立した生活を維持する為には認知症以外に転倒による骨折等のリスクを防ぐことも大事です。噛み合わせがあると認知症発症リスクが抑えられるとした研究では、転倒回数も調査しています。

認知症高齢者の咬合状態と転倒回数

調査結果では、残存歯数の少なくなった人は目を開けたままの状態での片足立ちを持続する時間が有意に短くなり、65歳以上の健常高齢者で残存歯数が19本以下で義歯を使用していない人は、20本以上の者と比べて2.5倍転倒するリスクが高かった。
また健常高齢者より転倒リスクが2倍も高いとされる認知症高齢者でも、臼歯部の咬合を維持しているグループと、臼歯部に咬合がないグループに分けてみたところ、2回以上転倒した方は臼歯部に咬合がないグループが有意に多かったこともあきらかとなりました。

[Q&A]舌につく白い汚れは何ですか?

舌表面に付着している白色または茶褐色の汚れは舌苔(ぜったい)と呼ばれる苔状の汚れです。舌苔の付着原因は、その方の全身状態や服薬、口腔内の状態(唾液量や乾燥の度合い)など様々です。
普段使っている歯ブラシで除去清掃すると嘔吐反射が起こったり、また除去する程度についても判断がつきにくい為に、専門職種ではない介護現場の職員にとって舌のケアは難敵です。更に開口量が小さい、開口保持が難しい場合には汚れの程度や範囲すら判断出来ません。

では自然に減少するのを待てばいいのでしょうか?

2015年に「舌苔の付着面積が大きい人は、呼気中のアセトアルデヒド濃度が高い」ことを岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の研究グループが突き止めました。口の中のアセトアルデヒドは、口や喉の癌の原因となることが指摘されており、舌を清掃することは非常に重要なことです。

日常的な口腔ケアでは難しい専門性を伴うケアには、専門職種である歯科医師、歯科衛生士との連携の下で進めていきましょう。

どうして歯は黄ばむのか?

歯は硬いエナメル質で覆われています。その内側にはエナメル質に比べて硬度が低い象牙質があります。歯の色と言えば表面のエナメル質が白いと思われがちですが、そうではありません。エナメル質は半透明色のため、内側の象牙質の色が透けているのです。

歯はどうして黄ばむのか?訪問歯科、専門的口腔ケアのオーラルアップ

歯の黄ばみは加齢と食事による着色が主な原因です。加齢で歯の神経が小さくなったり、喫煙、お茶や珈琲による着色汚れもあります。汚れの付着は内側の象牙質ではなく、食べ
物や飲み物の色素が歯の表面にある「べクリル」というタンパク質の薄い膜と反応して色素沈着を引き起こしています。

白い歯は年齢を若く見せるという審美的効果があります。しかし歯の白さは健康のバロメーターではありません。白さを保つことよりも、毎食後や就寝前に歯周汚れを刷掃する等して口腔内の衛生状態を保つことが健康維持には大切なのです。

歯科訪問診療料[平成28年度診療報酬改定]

平成28年度(平成28年4月1日~)から歯科訪問診療料が改定されました。
※詳しくは厚生労働省HPにてご確認下さい。

歯科医師がご自宅または介護施設、福祉施設、病院に訪問して診療を行う場合の基本となる診療料であり、処置料、医学管理料、指導料、処方等は含まれておりません。また訪問歯科診療料の構造(同一建物での診療人数により、1~3が選択されます)に変更はありません。

歯科訪問診療料 1日につき

  • 歯科訪問診療料1 866点 今回の改定:変更なし
    [1割負担=870円、2割負担=1,732円、3割負担=2,600円] ※患者さんお一人の為に歯科医師が訪問し、診療や治療を行った場合
  • 歯科訪問診療料2 283点 今回の改定:変更なし
    [1割負担=280円、2割負担=570円、3割負担=850円] ※同一建物で診療した患者さんの人数が2人~9人だった場合
  • 歯科訪問診療料3 120点(-23点) 今回の改定:マイナス 以前は143点
    [1割負担=120円、2割負担=240円、3割負担=360円] ※同一建物で診療した患者さんの人数が10人以上だった場合

平成28年度診療報酬改定

本日より平成28年度となり、診療報酬が改定されました。昨年の12月時点で厚生労働省から改定率に関するプレスリリースによって既にご存知の方も多いと思いますが、念のため各科や本体部分と薬価部分の改定率を掲載します。

診療報酬本体は、+0.49%の改正。各科の改定率は以下の通りです。

  1. 医科 +0.56%
  2. 歯科 +0.61%
  3. 調剤 +0.17%

薬価等 -1.22%

材料価格 -0.11%

歯科に関係するところでは、新規収載された後発医薬品の価格の引下げ、長期収載品の特例的引下げの置き換え率の基準の見直し、費用対効果の低下した歯科材料(歯科用アマルガム等)の適正化の措置があります。

訪問診療料の自己負担額の変更
歯科訪問診療料
[その他は、後日投稿予定]

厚生労働省 診療報酬改定 プレスリリースはこちら

平成28年度診療報酬改定の基本方針

平成27年12月に社会保障審議会医療保険部会及び社会保障審議会医療部会により示された基本方針は以下の通り。歯科関係箇所を一部抜粋。

・超高齢社会における医療政策の基本方向
・地域包括ケアシステムと効果的・効率的で質の高い医療提供体制の構築
・経済成長や財政健全化との調和
上記の基本方針から、改定に関しての基本的な視点と具体的な方向性は以下の通り。

  1. 地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点
    ・地域包括ケアシステム推進のための取組の強化
    (1)複数の慢性疾患を有する患者に対し、療養上の指導、服薬管理、健康管理等の対応を継続的に実施するなど、個別の疾患だけではなく、患者に応じた 診療が行われるよう、かかりつけ医やかかりつけ歯科医の機能を評価
    (2)医療機関間の連携、医療介護連携、栄養指導等、地域包括ケアシステムの推進のための医師、歯科医師、薬剤師、看護師等による多職種連携の取組等を強化
  2. 患者にとって安心・安全で納得できる効果的・効率的で質が高い医療を 実現する視点
    ・ 複数の慢性疾患を有する患者に対し、療養上の指導、服薬管理、健康管理等の対応を継続的に実施するなど、個別の疾患だけではなく、患者に応じた診療が行われるよう、かかりつけ医やかかりつけ歯科医の機能を評価
  3. 重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点
    口腔疾患の重症化予防・口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の推進

超高齢化社会の歯科医療体制の在り方として、「かかりつけ歯科医の機能として、口腔疾患の重症化予防・口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の推進の為、療養上の指導、服薬管理、健康管理等の対応を継続的に実施するよう医療機関間の連携、医療介護連携等を強化する」ことが取りまとめられています。

医療機関間の連携、医療介護連携による他職種連携について、対応可能な歯科医療機関をお探しの病院、介護施設等の関係者の方は、対応エリアをご参照下さい。