平成28年度診療報酬改定の基本方針

平成27年12月に社会保障審議会医療保険部会及び社会保障審議会医療部会により示された基本方針は以下の通り。歯科関係箇所を一部抜粋。

・超高齢社会における医療政策の基本方向
・地域包括ケアシステムと効果的・効率的で質の高い医療提供体制の構築
・経済成長や財政健全化との調和
上記の基本方針から、改定に関しての基本的な視点と具体的な方向性は以下の通り。

  1. 地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点
    ・地域包括ケアシステム推進のための取組の強化
    (1)複数の慢性疾患を有する患者に対し、療養上の指導、服薬管理、健康管理等の対応を継続的に実施するなど、個別の疾患だけではなく、患者に応じた 診療が行われるよう、かかりつけ医やかかりつけ歯科医の機能を評価
    (2)医療機関間の連携、医療介護連携、栄養指導等、地域包括ケアシステムの推進のための医師、歯科医師、薬剤師、看護師等による多職種連携の取組等を強化
  2. 患者にとって安心・安全で納得できる効果的・効率的で質が高い医療を 実現する視点
    ・ 複数の慢性疾患を有する患者に対し、療養上の指導、服薬管理、健康管理等の対応を継続的に実施するなど、個別の疾患だけではなく、患者に応じた診療が行われるよう、かかりつけ医やかかりつけ歯科医の機能を評価
  3. 重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点
    口腔疾患の重症化予防・口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の推進

超高齢化社会の歯科医療体制の在り方として、「かかりつけ歯科医の機能として、口腔疾患の重症化予防・口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の推進の為、療養上の指導、服薬管理、健康管理等の対応を継続的に実施するよう医療機関間の連携、医療介護連携等を強化する」ことが取りまとめられています。

医療機関間の連携、医療介護連携による他職種連携について、対応可能な歯科医療機関をお探しの病院、介護施設等の関係者の方は、対応エリアをご参照下さい。

高齢者に最適な歯ブラシの選び方

歯ブラシは色や形状のほか、毛束の量、植毛の硬さ、毛の材質の違いによってさまざまな種類が存在します。例えば、歌舞伎役者が出演する歯ブラシのCMでは、毛束の量が多い=贅沢ケア歯ブラシと謳っていたり、歯茎の溝に入りやすい極細毛先を謳ったり、ドラッグストアでは動物の毛を使用した高級な歯ブラシが手の届きやすいところに置いてあります。

では、高齢者にとって使いやすい最適な歯ブラシとはどういうものでしょうか?

まずは歯ブラシの各部位の名称をご説明します。歯ブラシの各部位の名称(植毛、タフト、ネック、ヘッド、ハンドル)

高齢者が使う歯ブラシ選びのポイント

  • 毛の硬さは「ソフト」
    エナメル質の減退によっては傷つき易くなっています。
    毛は出来るだけ柔らかい素材を選びます。
  • ヘッドの大きさは「コンパクト」
    開口が困難だったり、開口が小さい場合にも、ヘッドが小さいとお口の中に入り易くなります。
    ヘッドが大きいとブラッシングしたい箇所への圧力が分散してしまい、清掃能力が落ちます。
  • ハンドルは「ストレート」
    まっすぐな柄は持ち易く、且つ清掃したい箇所へまっすぐに毛先が届きます。またハンドルが太めだとご自身でも握りやすいので、握力が低下した方向けです。

植毛にも種類があります。

歯の数や目的によって適した植毛パターンは異なります。

  • 溝や歯間の清掃など細かい箇所の清掃に適しているのは  ⇒ 1~2列
  • 食べかすや、歯垢除去に重点を置く場合に適しているのは ⇒ 3列
  • 歯肉マッサージに重点を置く場合に適しているのは    ⇒ 多数列

歯がなくても、歯の根っこが残っている箇所にもブラッシングは必要です。また歯肉マッサージは歯ぐきの血行を良くする効果もあります。

※個別の状態や症状などを考慮しておりませんので、歯ブラシ選びの参考にして下さい。
※お口の中の状態は人により異なりますので、かかりつけの歯科医師や歯科衛生士に相談してみましょう。

歯を失う最大の原因は…

歯を失う最大の原因はむし歯ではなく、『歯周病』

財団法人8020推進財団がまとめた「歯を失う原因」で、最も多かったのが歯周病の41.8%です。次に多いものからう蝕(虫歯)が32.4%、破折(強い衝撃などによって歯が折れたり、欠けたりすること)11.4%、矯正歯科治療などの上記以外の原因が14.4%でした。

日本人が歯を失う原因(歯周病、むし歯、破折、歯科矯正他)
最大の原因である歯周病は日本人の国民病とも言われており、成人の約4人に3人が罹患しているとも言われています。この歯周病が歯の寿命に大きな影響を及ぼしていることは明らかですが、実は加齢とともにそのリスクは増大しているのです。

折れ線グラフでは先ほどの調査を10歳毎の年齢階級別に再分類したものです。そのグラフを見ると加齢により、各原因の占める割合が変化しています。

年齢階級別の歯の喪失原因(歯周疾患、齲蝕、歯の破折、矯正歯科治療や全身疾患が原因)
44歳までの歯を失う原因で最も多いのは「う蝕(むし歯)」です。しかし、45歳からの年齢階級を見るとう蝕と歯周病が逆転しています。また歯周病は45歳以上から1位をキープし続けています。また55歳以上の年齢階級に注目すると、歯を失う原因の半数以上が歯周病に因るものだったという結果が明らかになっています。

結果的に歯を失うと以下のようなトラブルにつながる場合があります。
・食べ物が噛み難くなった。
・のどに食べ物を詰まらせることが増えた。
・声が聞き取りにくくなった。

このように日常生活において支障をきたすことも起こります。さらに近年の医学研究によって、歯周病菌肺炎の起炎菌となるばかりではなく、脳梗塞や、脳血管性認知症、狭心症、心筋梗塞、細菌性心内膜炎、糖尿病、バージャー病、関節リウマチ、骨粗鬆症、胎児の早産など、疾患を引き起こしたり、病気の悪化や重症化を招くことが明らかになってきており、全身に対して大きな影響を与えている口腔疾患なのです。

歯肉炎など軽度な状態であればブラッシング励行や、歯周疾患処置、専門的口腔ケア等でも改善していく場合が多いですが、歯周病がより悪化してしまうと外科処置が必要となる場合があります。外科処置となるとご本人の身体的、精神的な負担が発生します。

歯周病は自覚症状を感じにくい口腔疾患であるために、日頃より歯科の専門職による定期的な検査や、早期発見の為にも日頃から連携や介入の体制を整えておく環境作りが重要です。

在宅療養支援歯科診療所とは

在宅療養支援歯科診療所

あまり知られていませんが、歯医者の中でも高齢者向けの歯科医療の中で、在宅医療を提供出来る歯科医院について複数の基準を満たすことで「在宅療養支援歯科診療所」として認可されます。

施設基準の為の届出項目は複数ありますが、以下は満たさなければいけない基準の一部を抜粋したものです。

  1. 高齢者の口腔機能管理に係る研修を受けた常勤歯科医師がいること。
  2. 歯科衛生士がいること。
  3. 既に在宅医療を行っていること。

つまり昨日今日で往診始めましたという医院ではなく、以前から在宅医療を行っている実績があり、且つ常勤の歯科医師は定められた講習を受けており、歯科衛生士も在籍している歯科診療所だということが想像出来ます。

施設や病院等で連携する歯科医院選びの参考情報として、「在宅療養支援歯科診療所」の登録有無を確認してみましょう。

かかりつけ歯科医院の有無と認知症

かかりつけ歯科医院がない人は、認知症発症リスク上昇

厚労省研究班が愛知県の健康な65歳以上の高齢者 4425 名を継続的に調査し、データを分析したところ、認知症発症に影響する年齢、治療疾患の有無や生活習慣を考慮したリスク度合いの計算で、かかりつけ歯科医院のある人に対して、無い人の認知症発症リスクが1.4倍に上昇したという研究報告があります。